2014年10月8日水曜日

LEDにはおよびませんが


「へえええ!!すごいねええ!!」
母の大きな声。なんだろ?
「物理学だ!」
なぜか得意げな父。
もしかして、ノーベル賞?
「そお、3人もだって!!」
文学賞はねえ、もしかしたらってねえ、
へえ、あら、そお!
ちょうど夕食を始めるとき。
急いでテレビをつける。
おおう!ほんとうだ!
テレビと流し台の母を往復して同時中継しながら、
母の勘違いをただしておく。
「一つの研究に対して3人がもらったんだよ」
3つもらったんじゃないからね。

「赤崎さん、出たよ!」
母がやっと食卓につく。
「70代だね」
「そお?80いってるんじゃない?」
ほら、やっぱり。
「LEDに関係あるのかな?」
母の言葉にちょっとびっくり。
私もちょうど思ってたけど、
母に言っても分からないと思ってた。
「かもね。あの後、出てきたもんね」
やはりそうだ。
「立派な耳だね」
今度はいつも母が言うようなことを私が言う。
「ほんとだ。飛び出てるね」
「肉厚。松下幸之助みたい」
だんだん松下さんに見えてきた。

少し前に街灯が明るくなった。
「ああ、なんか電柱に登ってやってたよ」
と母。
切れてチカチカしていると、
「いつ、誰が取り替えてるのかな?」
といつも思っていた。
切れないやつに変えたんだろうな。
小さいのに、すごい明るさ。
ネットで見た。やはりLEDだ。
こんなふうにお世話になってるんだな。
それにしてもノーベル賞とは。

「トイレの電球、一回も変えたことないよ」
少し前に母が言った。
ふつうの電球だよ。
築うん十年も経つのに。
なんでこんなにもつんだろ?
お風呂場も、昨年代えたのが2回目じゃないかな?
脱衣のところはふつうに代えてる。
一番代えにくいのは、階段の真ん中につり下がってるやつ。
ここもよくもつ。
それが今年のなかばころ、ついに切れた。
どうやって代えるのかな?
「業者に頼んだほうがいいよ」
とは姉。
前に代えたときにたいへんだったらしい。
それもなんだかねえ。
どうしようかなあ?
なんとかできないかなあ?
父も使う階段。足元が危ない。
1ヶ月くらいたったころ。

「どくだみ、どうしてる?」
え?なんかカゴに積まれてるけど?
「早く干さないと、かびちゃう」
2階に運ばれると、母は見にいけない。
運んだのは父らしい。
またそのままにしたんだあ。
まったくもう。
梅雨どきに入っちゃったじゃん。
すごい量。
知り合いがきれいなのをくださるのだ。
梅雨の晴れ間、急いで干す準備をする。
ひもを渡したけど重みでたわむ。
長い竿にひっかけるしかないか。
一番長い竿を見つけて運ぶ。
階段を折り返したとき、
竿がつるした電球に当たった。
「ガチャっ」
おっと!割れたかと思った。

その日の夕方、
階段のスイッチをカチッ。
つかないのにまた入れちゃった…と思った瞬間、
「パッ」
え?
明かりがついた。
あら?ほんとに?
それならうれしいけど。
あれから数ヶ月。
いまだについている。

昨日は畑びより。
残ったゴーヤを抜いた。
チビゴーヤが10数本。
これでほんとに最後。
いい夏だった。