86歳になる母は、毎日嬉々としてシニアカーを乗っている。
我が家は坂道の上にあり、足が弱くなった母が、思い立ったのだった。
目の薄い高齢者が乗るのは危険と思ったし、
何より、その性能を信じていなかった私は、もちろん反対した。
しかし、今ではすっかり考えが変わってしまった。
毎日母は、朝と夕方、シニアカーに乗って買い物に出かける。
急な坂の下にスーパーがあり、そこの安売りを目当てにしているのだ。
本当に急な坂なのに、シニアカーはスイスイと事もなげに登っていく。
時にはお米5キロとかを積んでいるのだが、ものともしない。
その馬力には、正直、驚いた。
シニアカーというだけあって、高齢者向けによく考えられているようだ。
母は目が悪いこともあって、何度もガードレールとか、電柱とか、
時にはスーパーの入り口のガラスとかに、コツンと当てることがあるらしい。
しかし、その都度、どこにも傷がつかずに済んでいるのだ。
母が言うには、急いでブレーキをかけても、急には止まらない。
まずはそこが高齢者向けなのだとか。
そして、そっと当たるので、だから傷がつかないと言うのだ。
その、止まり具合と、当たり具合が、よく考えられていると言うのだ。
母は最初、スズキのシニアカーを検討していた。
そして一応、ホンダのを見に行ったのだ。
ホンダのシニアカーはかっこいい。
色といい、デザインといい、洗練されている。
どうせ乗るなら、断然、ホンダがいいと思う。
お店の人も、シニアカーの販売には力を入れていないようだ。
説明も、熱がなく、性能についてもほとんど説明がなかったとか。
それでもさすがはホンダ、良いものを作っているなと感じる。
母がもし、シニアカーに乗ることがなければ、
こんなに外出できることはないだろう。
外の空気に触れることが大好きな人だから、急に老いたかもしれない。
もし、ご本人に少しでもその気があるならば、
ぜひ、ご家族は、前向きにシニアカーを検討してあげてほしいと思う。
毎日乗り回している母を見ていて、本当によかったと思うから。