2014年9月29日月曜日

あら、アイツのこと、言ってなかったっけ?


畑仕事の最初のミッションは、雑草取りだった。
玄関前の小さな花壇。
雑草に覆われていたなんて、
言われるまで気づかなかった!
抜いてはいけないものの間にうっそうと生えている。
根っこを辿って引っこ抜く。
手探りなのに、雑草だ!と分かるようになってくる。
ここらへんからハマったような気がするなあ。
根っこから抜ける快感!とか。

根っこをスポッと残す「やつ」がいる。
「そいつ」は化けるのがとてもウマい。
「私はゴーヤよ」という顔をして、
背丈以上に伸びていたこともある。
根っこの張り方もそんじょそこらの雑草とは違う。
横にも縦にも延々と伸びる。
根っこを追うのに10分はかかる。
やわらかくて、途中で切れてしまうこともしょっちゅう。
鼻歌まじりの雑草取りも、「そいつ」を見つけると、
ネズミと出会った猫のごとく、戦闘モードに切り替わる。

母もよく知る「そいつ」に、
「アイツ」という名を付けた。
汗だくになったり手のひらに水ぶくれができたりしながら、闘った。
朝取った、1メートル以上の戦利品を母に見せたくて、
庭先にびろ〜と伸ばしておいたことがある。
夜、「見た?」と聞くと、
「どれ?分からなかった」
「ええ?出たすぐのとこにあったでしょ?」
「見たんだけど…」
翌朝見たら、夏の日差しで干からびて、
細いごぼうくらいあった根が、ひげみたく様変わり。
ダメダメ、これじゃ迫力が伝わらない。
ぜひ、取り立てのを見ていただきたい!

「アイツがまたいてさあ」
秋になっても食卓の話題によくのぼる。
「アイツって誰だ?」
父が首を回して突然、口を開く。
「アイツって、ほら、草子が必死になってる雑草よ」
なんだ…と言わんばかりにまた、テレビに戻る。
少し前の私も、父のように庭仕事にはまったく興味がなかった。
スイッチってあるのかな?

「アイツ」に10分はもったいない。
最近は、どんなに小さな「アイツ」でも、
見つけたら、スコップを取りにいく。
「変身」を見破る目も肥えてきた。
駅までの公園の植木にも、
「アイツ」がたくさん絡みついている。
よく見ると、下のほうから道路に向かってきてもいる。
すごい勢い!
わあ、嫌だ!
通るときの私、目つき悪いかも、
公園に人がいるときは、気をつけよう。

雑草のない、きれいな畑は気持ちがいい。
でもそれも、雑草取りがあっての気持ち良さ。
「アイツ」の全滅を目指したけれど、
きっとそうなったらつまらない。

明日は一日、畑ができる。
雑草取りを心ゆくまで楽しもう!